東京高等裁判所 昭和26年(う)1228号 判決
記録を調査すると、原審において昭和二十四年十月十九日の第七回公判期日に原審弁護人Iの請求にかかる藤沢市片瀬二千二百九十六番地野口産業株式会社の検証並びに同検証現場において証人として石橋毅、菅原吉之助の各尋問をなすべき旨決定をなし、次いでその検証期日たる同年十一月十二日右検証並びに証人尋問を施行したのにかかわらず、次回公判期日たる同年十二月十四日の第八回公判期日及びその後の公判期日においても被告株式会社岸野商店(同被告会社については後記のごとく第十一回公判期日にその証拠調の請求があり、その証拠調を履践している)を除くその余の被告人については右検証調書及び証人尋問調書の取調をなした形跡のないことは所論のとおりである。
よつて原審の訴訟手続には刑事訴訟法第三百三条に違反する瑕疵があることは否めないところであるが、右検証及び証人尋問をなした裁判官と原判決をなした裁判官とは同一であり、その間に変更がなかつたのであるから、原判決をなした裁判官はもとより右検証並びに証人尋問の結果を熟知し、これを考慮に入れて判決しているものというべく、右検証調書又は証人尋問調書の記載内容が原判決の認定を左右するに足り、若しくはこれを罪証に供すべき場合は格別然らざる場合には特にこれが証拠調の手続をなさなくとも判決に影響を及ぼさないものというべきである。
しかして右検証調書及び証人尋問調書の記載内容が原判決の認定を左右するに足らないことは後記のとおりであり、且つ原判決はこれらの調書を罪証に供していないのであるから前記訴訟手続の瑕疵は判決に影響を及ぼさないものというべく、結局論旨は理由がない。
(註 本件は一部免訴により破棄自判)